アニマネ開発日誌

アニメアプリのアニマネの開発日誌です。

広告業界がコンテンツブロックで騒然とする中、次なる爆弾はSFSafariViewControllerとATSかも知れないという話

何だかラノベみたいに長いタイトルだけど、iOS9から搭載されたSFSafariViewControllerとATSがコンテンツブロックの次に広告業界で問題になる、 もしくはiOSにおけるWeb広告配信にとどめを刺すのではないかという話です。

【2016年10月追記】ATSについては条件が緩和され、WebViewの場合は通信を許可する設定が可能となっています。したがってこの記事で危惧していたことは杞憂に終わりました。

先にコンテンツブロックを巡る話題を簡単におさらいしてみます。

2015/09/26頃までのコンテンツブロックを巡る動き

  1. iOS9がリリースされる。
  2. コンテンツブロックの機能が早速話題に。
  3. アプリ系メディアがこぞって「コンテンツブロックを導入して快適に!」と盛り上がる。
  4. 一方で広告業界の戦々恐々とした様子を各メディアが伝える。
  5. コンテンツブロック賛成派と反対派の仁義なきメディア合戦。
  6. そんな中、コンテンツブロック作者は広告主からお金をもらって、一部広告を再び表示しだす
  7. ますます混沌とするコンテンツブロック界隈 ← 今ここ

若干あおり気味だけど、大体こんな感じです。

現段階ではさして影響ないんじゃないかと個人的には思っています。 お金を払ってまで広告を見たくない人が、広告をクリックするとは思えないので。

広告をみたくない人がコンテンツブロックを使えば使うほど、ブロック解除の単価が高くなると思われるので、 広告をみたくない人がブロック解除の広告になっているというのは皮肉な話です。

コンテンツブロックの何が問題か?

  • 広告で成り立っているWeb業界で、広告が表示されなくなると業界全体がゆるやかな死に向かう。
  • 広告以外のアクセス解析系までブロックされると、サイトの改善に著しい影響がある。

もし、Safariに標準搭載されてしまうと、上記のようなことが考えられます。 TVでCMがなくなると、民放はやっていけなくなるのと同じですね。

で、私が知る限りSafariに今後標準でコンテンツブロックを搭載するという話はなかったと思うのですが、 広告業界ではGoogleの広告収益にメスを入れるつもりではないかと騒然としているわけです。

もし、Safariが標準でコンテンツブロックを搭載したとしても、 アップルのことなので、iAdならOKとかにしそうな気がします。

そうなれば、Googleの広告益はアップルに奪われるものの、代理店は入稿先が変わるだけなので、 さして問題ないじゃないかというのが個人的な見解です。 (独占禁止法とか別の問題はあると思いますが。)

iOS9からの搭載されたSFSafariViewControllerとATSでiOSのブラウザは作れるのか?

ようやく、本題に入ります。

iOS9以降、再びiOSブラウザにとって暗黒の時代がくるのではないか?

そして、それがGoogleの広告を駆逐する布石になるのではないか?

というのが、本エントリの主旨です。 (ここまで長かった。)

ここからは少々技術的な話になります。

昔からアップルはSafari以外のブラウザアプリには厳しく、 ブラウザデベロッパーは冷遇されてきました。

iOS7まではパフォーマンスで劣るブラウザのエンジンを使わざるを得ない状況で、 iOS8ではそれが緩和されたため、ブラウザデベロッパーの多くが喜びました。

しかし、iOS9では再びブラウザデベロッパーに悩ましい問題がでてきます。

1.通信にはSSLが必須になった。

SSLというのは暗号化通信です。

通信はすべて暗号化されて行われるべきとして、iOS9からは暗号化通信が必須となっています。

ただ、急に適用してもデベロッパーが困るため、現段階(2015/09/26時点)では例外措置として無効化できます。 将来的にはSSLを必須にするようなので、1〜2年のうちに厳格に適用するのではないかと推測しています。

これの何が問題かというと、世の中には暗号化通信に対応していないWebサイトが山のようにあります。

ユーザーはブラウザを使って自由にWebサイトを閲覧しようとしますが、暗号化通信に対応していないサイトは全て見れなくなってしまいます。

2.SFSafariViewControllerというSafariと同等機能をもつブラウザをアプリ内部に組み込めるようになった。

先ほどの暗号化通信が必須になったという件については、SFSafariViewControllerというSafariと同等の機能を使えば回避することが可能です。

ただし、このSFSafariViewControllerはカスタマイズがほぼできません。

暗号化通信を必須にする件はSFSafariViewControllerを使うなら許してやんよ。 だけど、見た目は変えさせないよ、あくまでSafariをアプリの中で使わしてあげるだけね。

ということです。

iOSのブラウザはどのアプリもエンジンは同じ(Webkit)で、外側のインターフェイスを変えることで、 アプリとして生みだしてきました。

それが、SSL(暗号化通信)の必須化と、SFSafariViewControllerの見た目のカスタマイズの制限とのコンボで、 ブラウザアプリが事実上作れなくなってしまいます。

私が知るかぎりは、この問題に対しての有効な手立てが見つかっていないはずです。

ブラウザがSafariだけで、広告もiAdしか許されない世界

ここで、コンテンツブロックの話に戻ってきます。

仮にアップルがSafariで表示するWebサイトの広告をiAdしか認めないとどうなるでしょうか?

コンテンツブロックが標準搭載されると間違いなく一番打撃を受けるのはGoogleです。

Googleも対抗して、自社メディアの中で広告を展開するでしょう。

Google+をはじめとしたアプリで、Webサイトのリンクを開く場合はChromeで開くでしょう。

しかし、そのChromeが使えなくなり、Safariでしか表示できなくなったとしたら?

iPhoneの中で許される広告はアプリ内の広告か、Webは全てiAdのみという状況になりそうです。

そうなると、Web業界がどうなるのか?

私には今のところ想像がつきません。

非常に長い説明となりましたが、アップルはiOS9から搭載されたコンテンツブロック、ATS、SFSafariViewControllerによって、 Web広告をiPhoneから締め出すことが可能になったというお話でした。

Web、アプリ業界にいる身としては、アップルが正しい判断を行なってくれることを願うほかありません。